ペグボックスのブッシング跡の修理

今回の楽器は超大物!なかなか武骨な修理痕の目立つヴァイオリン…



他の工房で修理なさった楽器とのことですが、スクロールのブッシング跡の処理があまり美しくないことに加え、おそらくマシン(主にコントラバスなどに付いている機械製のペグ)を装着したであろう跡の部分が2mm近く凹み、そこに修理の際に上塗りしたと思われるニスが色濃く溜まってしまっています…。

色々と直す部分は多いですが、まずは飛び出たブッシング材を削るところから!



かなり派手に飛び出ていたブッシング材を削り、木肌に直接ニスが染み込まないよう、目止めとして膠水を塗った状態です。



次に、リタッチ(色合わせ)作業の下準備として、木と木の境目の部分に顔料で色を付けて行きます。



絵画で言う、キャンバスとなる部分を作っていきます。
今回は、ペールオレンジ色で下地塗り!
境目が残っていると、上から色を合わせたり、ニスを塗った時に接着線がかなり目立ってしまうので、とても大切な工程です。
紙やすりなどで何度も面を平らにしながら、慎重に塗っていきます。



次に、第一色合わせ!



今回は、材が飛び出ている部分と凹んでいる部分の2パターンの修理を行わなくてはならないので、色合わせも二段階に分けて行います。
顔料で作った下地の上にざっくりと染料で色を乗せ、ニスでカバーした段階です。
また同時に、綿棒と筆を使って、凹んでいる部分に溜まっている色ニスの除去を行い、専用の液材を使って凹みを慣らして行きます。
最終的にしっかりと色を合わせるためには、どの工程でも何度も紙やすりを掛け、平面を出しながら塗っていくことが大切です!
最後に、凹み部分の色を合わせて、全体をニスで保護します!



飛び出ていた部分・凹んでいた部分の他にも、古い傷にニスが溜まってしまっている所などの修正も済ませた状態です。
ここまで来ると、ほぼ新品同様の状態まで回復しています!
見た目は勿論、触った感触もつるつる、ぴかぴかです♪



最後に、修理経過を分かりやすくまとめた画像をご用意致しました!
左が元々の状態、真ん中が途中経過、そして最後の画像が修理後のものとなります。

写真ごとに角度やライティングがちょっとずつ違うので、少々分かり辛いかもしれませんが…見比べてみると、表面のツヤ、色味、ダメージの具合なども、すべて新品同様に修理されているのがお分かり頂けるかと思います♪




今回修理したこのペグボックスと呼ばれる部分は、弦を巻き留めるペグを固定する、演奏を行う上でとても大切な部分です。
それ故に、経年劣化による摩耗や、ペグを差し込む際の力加減などで非常にダメージを負いやすい部分でもあり、破損修理などのご依頼を非常に多く頂く箇所でもあります。
特に、摩耗によってペグ穴が完全に広がってしまった場合には、ブッシングと呼ばれる接ぎ木作業を行い、正しい位置・正しいサイズにペグ穴を開け直す修理が必須となります。
 ※修理前の画像に見られる、ペグ穴周辺の丸く盛り上がっている部分が、ブッシング作業を行った跡です。接いだ後に綺麗に削らないままニスを塗ったり、色の合わせが丁寧でないと、あのような美しくない仕上がりとなってしまいます…。

皆様の楽器のペグボックスは、どのような状態になっていますか?
もしも所有なさっている楽器のペグが固すぎて回らない、滑りすぎて止まらない、ペグ穴がペグボックスから極端にはみ出ている、ひび割れのような亀裂が入っているなどの症状が見られる場合には、是非一度無料メンテナンスにお持ちください♪